毎年夏になると、「熱中症による救急搬送者数が過去最多」といったニュースを耳にします。
特に2024年は、5月から9月の間に約9万7000人が熱中症で搬送されました。私たちの生活にも身近な「熱中症」。
しかし、しっかり対策をすれば防げる病気です。今回は、毎日できる「熱中症予防のコツ」をお伝えします。

1.熱中症とは?

熱中症とは、気温や湿度が高い環境で体の中の温度調節がうまくいかなくなり、体温が急上昇してしまう状態です。体は汗をかいて熱を逃がそうとしますが、脱水や体調不良があるとうまく機能せず、体に大きなダメージを与えてしまいます。

特に注意が必要なのは以下のような場合です。

  • 急に暑くなった日
  • 暑さに慣れていない時期(6月〜7月)
  • 寝不足や疲れがたまっているとき
  • 運動中や長時間の屋外作業

では、どのように予防すればいいのでしょうか?

2.予防の3つのポイント

① 前日の疲れをリセット!

疲れが溜まっていたり寝不足の状態が続くと、体温調節の機能が低下してしまいます。特に子どもは疲れていても無理をしがち。
連休や夏休み中は、生活のリズムが乱れやすく注意が必要です。暑さのピークを過ぎた時期でも、夏の疲れが知らず知らずのうちに溜まっていることもあるため、油断は禁物です。

睡眠をしっかりとること。そして“前日の疲れをリセットすること”が、熱中症予防の第一歩です。

② 暑い時こそ、しっかり食べる!

「暑いから食欲がない ...」そんな時もありますが、食事をとらないと体力が落ちて、熱中症のリスクが高まります。特に意識したいのは以下の栄養素です。

●タンパク質
私たちの体には、水分バランスを保つ働きをする「アルブミン」という成分があります。アルブミンは、食事から摂ったタンパク質を材料にして体内で作られます。そのため、タンパク質が不足するとアルブミンの量も減り、水分を保持しにくくなって脱水の原因になることがあるのです。
日頃からタンパク質をしっかり摂ることが大切です。

【代表的な食材】
肉(牛肉、豚肉、鶏肉、ベーコン、ハム)、魚(まぐろ、鮭、サバ)、卵、大豆製品(豆腐・納豆・厚揚げなど)

ワンポイントアドバイス
おすすめは「朝・昼・夕3食+間食」でこまめに摂ること。間食におすすめのタンパク質は、焼き鳥、ゆで卵、枝豆、ししゃもや煮干しなどの小魚。市販のものなら、サラダチキンやビーフジャーキー、あたりめなども良いでしょう。

●ビタミンB群
ビタミンB群は、エネルギーを作る代謝を助け、疲労回復にも役立ちます。特に夏場はビタミン類を消耗しやすいため、意識的に摂ることが大切です。

【代表的な食材】

  • ビタミンB1:豚肉、玄米、豆類(納豆・小豆)
  • ビタミンB2:レバー、卵、乳製品、うなぎ
  • ビタミンB6:バナナ、まぐろ、かつお、ささみ、にんにく
  • ビタミンB12:貝類(あさり、しじみ)、魚、卵

ワンポイントアドバイス
ビタミンB群は動物性のタンパク質に多く含まれます。色々な食材を組み合わせて食べるとバランスが良くなります。

●マグネシウム
マグネシウムは、筋肉や神経の正常な働きに関わっていますが、熱中症の予防にも欠かせないミネラルの1つです。暑い日は特に汗と一緒に流れ出でしまいやすいため、こまめに補うことが必要です。

【代表的な食材】
アーモンド、くるみ、干しエビ、海藻(わかめ・ひじき)、大豆製品(豆腐・納豆)、玄米、にがり、天然塩など。

ワンポイントアドバイス
調理の際に「にがりを数滴加える」「天然塩を一つまみ入れる」だけでもOK。水筒のお茶に混ぜたり、ご飯を炊くときに入れてもよいでしょう。

天然塩について
海水を原料にして、天日干しや釜炊きなど自然に近い方法で作られる天然塩は、ナトリウムのほか、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどのミネラルが豊富です。
一般的な食塩は、ほとんどが塩化ナトリウムでできており、ミネラルはほとんど含まれていないので使用には注意しましょう。

③正しく水分補給!

「のどが渇いていなくても、こまめに飲む」が基本です。暑い時期は、気づかないうちに汗をかいています。水だけではなく、塩分も一緒にとるのがポイント。

●日常の水分補給
 →水+天然塩(ほんの少し)
 →ノンカフェインのお茶+天然塩

●運動時や大量の汗をかいたとき
→スポーツドリンクが有効(ただし日常的には糖分が多すぎるので注意)

清涼飲料水や甘いジュースを頻繁に飲むと、体内で糖を代謝するためにビタミンB1が大量に消費されてしまいます。ビタミンB1は、エネルギーを作る大切な栄養素。これが不足すると代謝がうまくいかず、疲れやすくなったり、逆に熱中症のリスクが高まる可能性もあります。
そのため、「水分補給=スポーツドリンクやジュース」ではなく、状況に応じて対応することが大切です。普段は水やお茶+天然塩、汗をたくさんかいたときだけスポーツドリンク、という意識が重要です。

3.日々の積み重ねが命を守る

熱中症は、正しい知識とちょっとした工夫で防ぐことができます。特に子どもや高齢者は、自分の体調の変化に気づきにくいため、まわりの大人が意識してサポートしてあげることが大切です。

「よく眠る」「しっかり食べる」「こまめに飲む」
―― どれも特別なことではありませんが、毎日の習慣が命を守ることにつながります。大切な人の健康を守るために、今日からできることを始めてみましょう。